2011-12-12

アメリカの大学院で成功する方法

吉原真理『アメリカの大学院で成功する方法』(中公新書)を読みました。 

 2004年に出版された本ですが、今でも新鮮さを失っていない本です。
 最近はこの種の本がたくさん出版されているようですが、この本は読んでおいて損はないでしょう。もともと勉強(専門+英語)がかなり得意でアメリカの大学院へ留学を希望するなら似たようなルートを経由することになるでしょうから。それに、日本国内ではアカデミックポストを得にくい状況にありますから(今後ますます厳しくなるでしょう)、海外(英語圏)での就職を考慮に入れるとアメリカの大学院への留学は今後主流となる可能性すらあると思います。

 アマゾンレビューでは賛否両論という感じで、否定的なレビューでは「専攻が違う場合はここに書いてある通りではない」ということが攻撃されていますが、まあ、これだけ専門分化してしまっている学問においては、それは当たり前で、一体験談として読むのが正解でしょう。私は理系なので、ここに書いてあることのいくつかは当てはまらないと思いますが(例えば一日1冊のreading assignmentがあるとかいうことは数学専攻、工学専攻などではありえないでしょう)、だからと言って本書がミスリーディングであるというのは言いすぎだろうと思います。タイトルのつけ方には文句があるかもしれませんが、学術書はともかく、一般向けの本のタイトルというのは著者の自由になるものでもないので、物書きとしては、ちょっと著者に同情したくなります。 

 私自身は、本書を読んで大いに反省させられました。論文の書き方、教授との付き合い方などというのは若いうちは「単なる処世術」と思って軽視しがちですが、意外と重要なものです。本書に書いてある具体的な事例は、大いに参考になるでしょう。私はこの歳になって、ようやくその重要性に気づきましたが、「教授との付き合い方」については、時既に遅し。論文の書き方についても、若いうちの怠惰を取り返すのはなかなか大変で、今でも苦労が絶えません。  

 ちなみに論文の書き方やプロポーザル(研究の進め方)をどのように書くかなどに関しては、日本では指導らしい指導はなされていないような気がします。研究室によっては懇切丁寧な指導があるのかもしれませんが、私自身はあまり聞いたことがありません。最初の論文に関しては、ある程度コメントしてくれると思いますが、それ以後は、自分で考えるしかありません。プロポーザルに相当するものは、日本においては、科研費(や各種補助金の予算)申請書類がそれに近いのでしょうが、これも試行錯誤で出すしかないのが現状です(最近は有益な本も何冊か出ているようですが)。私自身は、インドから帰国してからJSTのA-STEPの補助金に申請し、幸い採択されましたが、申請書を書くプロセスでコーディネータの方々に申請書の添削をしていただき、大変有益でした。こうした苦労は若いうちにするべきだったと思いますが、なんとなくこうしたことは「事務仕事」という感じで軽視されがちな気がします。  

本書には、研究者として生き残るためのノウハウが惜しげもなく詰め込まれています。 文系・理系問わず重要なのは「自分が他人からどうみられているか」という視点でしょう。私はこの種の感覚が発達していないので、最近は、できるだけ助言(とおぼしきもの)をよく聞くようにしていますが、これまでの数々の失敗を思うといたたまれなくなります。鈍感なおかげで精神を病むこともなかったのかもしれないので、これは良し悪しでしょうけれど。 

本書のレビューに、こんなに利己的で自己保身ばかり考えているのは嫌だ、という類のものがありましたが、いやいや、これって実は利己的ではないのですよ。相手がどう思うか考えているんですから。自己保身は非難されがちですが、保身を考えない人は、淘汰されてしまう確率も高いのであって、あながち悪いとも言えないと思います。


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