2011-08-22

日本はもう終わったのか

正社員は既得権益か?――湯浅誠氏・城繁幸氏が、雇用、セーフティネットをめぐり徹底討論
という記事を読みました。
湯浅誠氏・城繁幸氏は、どちらも労働問題のエキスパート。二大オピニオンリーダーですから、彼らが労働環境をどう見ているのか、ぜひ知っておきたいと思ったのです。
 私はトータルでどれだけ利益が残るか考えるべきと思っています。問題は高度経済成長後それに代わる成長モデルを描けていない点にあり、それは人が移れないからに尽きますよ。
城氏は一貫して、この問題さえ解決すればよいと主張しています。

その理想主義(というか原理主義)を指摘する湯浅氏。
湯浅 城さんの話は「ウルトラC」があるような感じがするんですよ。ここさえやればうまくいくんだ、という。でも私はウルトラCはないと思う。いくつものステップを踏まないと、いきなり欧州型の職務給になどならないし、横断的労働市場も形成されない。
 私はそれでもウルトラCに賭けてみたい。焦っているのには理由があってそれは財政です。すでに維持不可能なレベルで、私はあと10年もたないと思っています。その意味でも一発逆転を図りたい。ハイパーインフレを起こしたら、結局資産を持たない経済的弱者が路頭に迷うことになる。そうした閉塞感を打破するのは改革しかないと思います。
湯浅 構造改革路線では無理だと思いますよ。この閉塞感の震源地は低所得貧困世帯のためです。進学できない、病院に行けない、就職できない、その不安が社会全体に蔓延しているのが今です。その立て直しなくしては、それこそ国際競争にも勝てないと思います。横断的労働市場の形成のために労働組合が持つ意味というのは本来大きい。派遣村を一緒にやったような労組の社会運動が、連合傘下の大産別にも影響を与える動きが理想と感じます。
城氏の対極たる湯浅氏は、この点で非常に現実的です。私も低所得貧困世帯をなんとかするべきだ、というのは同意見ですが、閉塞感の震源地が低所得貧困世帯にあるのかどうか。国全体が上昇機運にあるとき、低所得貧困世帯がもっと多かったとして、こんな閉塞感に包まれるでしょうか。たとえば、インドでは圧倒的に貧困世帯割合が多いですが、日本のような閉塞感は感じられませんでした。

私は現実問題として、日本の雇用環境はそう簡単にはよくならないだろうと考えます。拙著『未来思考 10年先を読む「統計力」』などにも書きましたが、統計資料をざっと眺めてみるだけでも、今後の状況の悪化はほぼ間違いなく、改善するための実現可能な政策がほとんどないからです。ウルトラCがあるにしても、実現できないなら、ないのと同じ。個人としてはあらゆる知恵を振り絞って考え、自分の身を守る以外に方法はないと思っています。

さて、雑誌プレジデント9月12日号、今回の特集は、「一億稼ぐ人の勉強法」です。
【「時間、集中、記憶、お金」効果満点テクニック】のコーナーに登場しています。
私の人生において最も重要な、ネガティブパワーの効用について話しました。

まだ人生始まっちゃいないと考える方へ、よろしければ、ぜひ。

4 コメント:

Kamimura さんのコメント...

進学できない、病院に行けない、就職できない等
3つの問題で、義務教育を受けられないという方は少ないと思うので進学できないというのは高校、大学として進学すればより高い給料が貰えると考えているから、病院に行けないのは病院に払うお金がないから(近所に病院がないという問題もあるけどそれはとりあえず置いといて)、就職できないというのは満足する額の給料が貰える仕事に就職できない、ということだと思うので結局のところ問題の根本は全てお金(経済)の問題。なので21世紀は経済の時代だと再認識。
20世紀が戦争の時代だったことを考えると時代はいい方向に進歩してるように感じたりします。
私自身はいずれ(いつかは分からないけどおそらく21世紀中?)は世界中が同一労働同一賃金になる(もちろん全く同一ではなくある程度の誤差はあると思いますが)と思っているので、両者のどちらの意見も興味深いなあと思います。私の予想としては、外国為替市場を介して均衡するのではないかなと思ったりしてます。各国の労働基準法や最低賃金とかの法改正もなくて済みますし。
国家全体としては、米国はあっさり産業自体を捨てて資本を他の産業に振り向ける傾向があるけど、日本はその傾向が少なそうなので、オランダ病みたいに産業の空洞化、そして英国みたいに稼いで貯めた資本を徐々に使っていくって状態になるのかな〜

Masahiro Kaminaga(神永正博) さんのコメント...

Kamimuraさん、コメントありがとうございます。

20世紀は確かに戦争ばかりでしたし、衛生面、技術面も含めトータルでは今の方がよくなってはいると思います。ただ、それだけ現代人の方が幸福なのかといえばそうでもないわけですが。

アメリカは資本の原理に忠実ですが、日本企業も表面上はともかく、実際のところはそうだと思います。マイナスが続けば撤退するでしょう。いつか、日本中に、いつかのフィラデルフィアやデトロイトのように、産業がまるごと廃棄された光景があちこちに広がるでしょう。

そして、それは、短期的にはともかく、長期的には悪いことではない、と私は思っています。世の中は不可避的に変化するので、状況に適応するしかないのです。企業も、個人も。

SN さんのコメント...

今度の震災で痛感した事のひとつは、「人は簡単には移れない」という事でした。当たり前だけど、経済理論のように、摩擦なく職業や場所を移れたりはしない。なかなか難しいですね。

でも、未来予測が難しいという事は、案外良い方向に行くかもしれないし、とりあえず自分のことを頑張るしかないかと、僕も感じますね。

Masahiro Kaminaga(神永正博) さんのコメント...

SNさん、コメントありがとうございます。

確かに動くのは容易ではないですね。勤め人は自分の意志ではどうにもならないでしょうし。異動願を出すのは勇気がいりますしね。

ただ、関西・九州への流入は、地域差は大きいものの震災後に10%~24%程度増加しているようです。企業が拠点を移したりした分が大きいのでしょうか。フリーランスの人もいそうです。