2011-02-03

東京理科大学理学部数学科(ただし20数年前)

出身校である東京理科大学(理学部数学科)の話。

理科大理学部(といっても20数年前だが)の良い点は、立地(神楽坂)と授業料の安さ(当時数学科は54万円。たしか、あの頃は年間4万円ずつ値上がりしていた)であった。

理科大の特徴を一言で言うと、

予備校

である。

入学式で偉い人(誰だか記憶にない)が、東大の大学院に何人、東工大に何人……と、他大学の大学院に何人進学したかを列挙したのには度肝を抜かれた。何だ、ようするにここは予備校なのか、と思ったのだ。

「第一志望の人がほとんどいない」という意味でも予備校的だった。東大の落武者が数名~十数名(ちゃんと数えていないが)、東工大の落武者が数十人(一番多かった)、後は、名古屋とかなんとか、あちこちの大学の落武者たちが集まってきている大学であった。たまにどうしても東京に来たいからという理由で東北大を蹴って来た人やバイト先に近いという理由で東工大を蹴ってきたとか、秋山仁が理科大出身だからという理由で早稲田を蹴った人とか、そういう理解し難い人たちもいたが、圧倒的に「第二、第三志望」というような大学であった。中には他大学を受けなおしている人もいた。

そんな大学であった。今は知らないけれど。

もしかすると、これから受験する人の参考になるかもしれないので、講義で何をやったかをざっくり書いてみる。もちろん、20数年前の話だから、参考になる、といっても「歴史的事実を知る」みたいなものかもしれないが。
共通しているのは1、2年だけだろうから、とりあえず、その分だけ。科目はみな通年である。
ちなみに、当時は前期試験は夏休み後だったので、勉強する時間は結構あった。

1年生:入学して間もなく野田のセミナーハウスで泊まりがけの合宿みたいなことをやった。確かフレッシュマンキャンプという名前だったと思う。講義があって、ユークリッド空間の位相と複素平面についてざーっと説明された。帰ったら試験があるという話で、皆ざわざわしていた。
数学系の科目は、数学I(実数の構成の話の細かいところとか、集合と写像みたいな話。数学科の国語)、代数学I(線形代数学。一般的な話からジョルダン標準形まで)、幾何学I(線形代数とほとんど同じだったが、こちらはベクトル空間の話が延々あり、アファイン空間がどうのこうの、という話が入っていた)。テキストの名前はあえて書かないが、洋書の邦訳で、訳は、いいとはいえなかった。We obtain that~が、「我々は~を得る」、みたいな訳になっていた。全体的に直訳であった。解析学Iはスタンダードな一変数の微積分の話で、テキストは解析概論だった。進みは遅かった気がする。
自然科学系では、物理学という科目は異様に進みが速く、前期に力学、解析力学、特殊相対性理論、後期が電磁気学だった。物理学科ではランダウリフシッツを使っていたので、私も読んでみたが、難しくて読みこなせなかった。化学という科目があったが、化学らしいことはあまりやった記憶がない。前期に量子力学をやり、p軌道とかs軌道とかいう水素原子の構造の話があった。後期は熱統計力学だった。ちょっとだけ高分子の話があったが、オマケみたいなもので、あれは化学という科目名でいいのかしらと思った。生物学もあったが、遺伝の話でハーディ・ワインベルグの法則をやったという以外、何を習ったのか全く記憶にない。

1年から2年になるときに関門科目(上記の科目は全部そうだったような気がするが、自然科学系は必修は物理だけだったかもしれない)で進級できない学生が出た。1.5割~2割くらい落ちた。たぶん。数学科はあまり留年しなかった。応用物理学科が4割くらい留年していた。

2年生:解析学IIは、一様収束とか条件収束とか、べき級数の話、多変数の微積分をやった。試験が年に6回あって、機械的に規定の点数以下だと落とされる仕組みだったと記憶している。
数学IIとかいう名前のルベーグ積分の講義があったが、テキストが解析概論の最終章で、あまり活き活きと理解できなかったので、別の本を読んだ。解析概論はルベーグ積分以外が素晴らしいので、なんだか奇妙な気分だった。代数学IIは、群論と環論の初歩みたいなことをやった。(体論もあったが、ガロア理論をやったのは3年の代数学IIIであった。本格的な環論は4年で特論で講義されていた)担当のY先生は、「ここは大体自明だから…」などと言いつつ証明をどんどん飛ばして山ほど具体例を紹介された。分かりやすかった。個人的には位数8の群を全て決定する、という問題(先生に出されたのか先輩から出されたのか記憶にないが)が異様に面倒臭かった記憶だけが鮮明に残っている。幾何学IIは、多様体論だったはずだが、先生が基礎論に凝っていて、選択公理を使わずに証明する、という異様なことをしていたおかげで極めてわかりにくかった。大して進まなかったと思う。
この他に数理統計学という講義(と演習)が土曜日に連続してあった。スタンダードな話だったが、統計らしい面白さはあまり感じなかった。応用確率論という趣であった。

1年の後期の物理学(中身は電磁気学)はちょっと苦労した。量子力学よりも電磁気学の方が難しく感じた。

複素関数論とフーリエ解析関係(といっても関数解析)は、3年でやるのだが、後者はともかく、前者はちょっと遅すぎる気がする。2年生でやるべきだ。それに内容も少なかった。基礎から等角写像がどうとかいうあたりを経由して留数定理までの話をやるのに1年。証明を全部つけてやっているからというのもあるが、ちょっと長い。おかげで解析接続の話はほんのオマケ程度だったし、リーマン面も出てこない。もう少しやってもいいのではないかと思うなぁ。講義が明快だったこともあって、余計にもったいない気がする。

今はどんな感じになっているのであろうか。

4 コメント:

maito さんのコメント...

最近、理科大の方とお話する機会があったのですが、進級するのは昔のように難しいみたいですよ。参考になるかどうかはわかりませんが。

Masahiro Kaminaga(神永正博) さんのコメント...

情報ありがとうございます。進級は今でも難しいですか。本来あのくらいの難しさでいいような気がします。普通に考えたらロクに勉強せずに4年で卒業できるっていう方が変ですし。

匿名 さんのコメント...

突然のコメント失礼いたします
私は、現在理科大理学部数学科(3年生)に在籍してる者です。
20年前の様子を大変興味深く読ませて頂きました。
ちなみに、20年前の雰囲気と今の雰囲気であまり差はないようです(笑)
今でも予備校のようで第一志望で入学してきた方はほとんどいませんし、1年から二年への留年率も2割くらいです。

ちなみに、理科大数学科の教員によるサイトを記しておきます。学習関連のところに専攻別の学習プランなるものがあるので、見れば現在のカリキュラムが分かると思います。
よろしかったらどうぞ見てください。  http://www2.ma.kagu.tus.ac.jp/index.php?%BF%F4%B3%D8%B2%CA%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6

Masahiro Kaminaga(神永正博) さんのコメント...

在理科大理学部数学科(3年生)様、コメントありがとうございます。現在のカリキュラムは公開されているのですね。参考にさせていただきます。見た感じ大差なさそうですね。

理科大の雰囲気は今も同じような感じですか。よかったようなそうでないような(笑)。