2007-12-27

関心が広すぎる

今度出すことになる5冊目の本(3冊目から5冊目までは結構固まって出る可能性がある)は,数学の本ではなく,情報セキュリティの本でもない.教育と社会の本だ.エッセイ集のようなものではない.統計が一杯出てくる実証的な本だ.

僕の関心は研究者としては,あまりに拡散しすぎている.深い研究をするには,あまり関心を拡散させてはいけない.狭すぎるのはよくないが,広すぎてもよくない.特に研究上の関心の広がりはそうである.フォーカスすることなしに偉大な仕事が達成されることは稀である.

関心が広い人はジャーナリストに向いているという.しかし,僕は間違いなくジャーナリストの才能がない.取材して事実をつかむというやり方だけでは捕捉不可能なものに関心が集中しているからだ.もっといえば,個々の人間には興味がない.僕の関心は,集団だ.統計的な性質なのである.こういう人間は,間違ってもジャーナリストにはなれない.

いつものことだが,自分が何者なのかよくわからなくなる.もう迷ってはいないけれども.

今日で仕事納め.新年は4日から出勤.みなさま,よいお年を.

2007-12-26

P≠NP問題と連続体仮説

「P≠NP問題」は,理論計算機科学の最大の難問の一つである.

クレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題の一つとして,この問題に100万ドルの懸賞金がかけられたから,案外有名なのかもしれない.

詳しい説明は省くが,P⊆NPは明らかだが,PとNPの間に何かあるのかないのかはわかっていない.

この問題,どうも連続体仮説とよく似ているように見える.
連続体仮説というのは,こういうことである.
自然数全体Nとone to one and ontoに対応する集合Aは,A~Nと書かれる(このような集合Aを可算集合という).また,card A = card Nのようにも書く.card Aは集合Aの濃度と呼ばれる(詳しくは集合の本を見よ).
対角線論法というのを使うと,実数全体Rの濃度card Rとcard Nは一致しないことがわかる.当たり前だが,N⊆Rなので,card N < card Rである.
連続体仮説というのは,card N < card A < card Rとなるような集合Aが存在しないというものである.

この命題は証明できるだろうか?
Cohenという数学者が,驚くべき結果を示した.示したのは,詳しく書かないと誤解のもとだが,Blogなのでいいかげんにかくと,連続体仮説は普通の集合論の体系(standard Zermelo-Fraenkel axioms)からは証明できないということ.

で,これが,なんとなく,「P≠NP問題」に似ている気がする(根拠はないが).
つまり,証明できないということが証明できてしまうような気がする.

気がするだけだが.

2007-12-25

2007-12-19

出版決定

残っていた一冊の出版決定.よかったよかった.

最近は統計分析ばかりやっているが,飽きない.Super Crunchersのエントリを書いたときにも思ったのだが,データマイニングは今後ヒットする.間違いない.

2007-12-17

Knolはフェアだろうか?

Googleの新サービス,Knolがオープン予定だという.Knolは,WikipediaとSquidooの掛け合わせに位置づけられるサービスだ.もちろん,現在のWikipediaとは対立する.

僕の現時点での率直な意見としては,Knolは,Googleがやるべきサービスではないと思う.Googleは,分散している情報の整理役であって,コンテンツ提供者ではない.Googleが両者をかねるのは,フェアではない.検索でKnolが上位にランクされるように操作できるからだ.

もっとも,技術力勝負のGoogleだから,そういうアンフェアなことはしないという気もするのだが,Knolが上位にランクインしたとき,それをユーザは素直に受け取らないのではないかと思うのだ.

2007-12-14

冷徹に現実を見つめること

重要なことは,現状をきちんと把握することだ.今後の可能性も徹底的に検討しておくこと.

冷徹に現実をみつめ,最大限の効果をあげる一手を打つこと.失敗した場合の手を事前に考えておくこと.実現性の低い可能性は容赦なく切り捨てること.

これができなければ生き残ることはできない.個人も組織も.

2007-12-12

リービング・ラスベガス

だいぶ前に見た映画だが,ふいに,リービング・ラスベガスを思い出した.

どうも,大佐に手紙は来ないあたりから,陰鬱な話が連想されたような気がする.

この映画のストーリーは,重度のアルコール依存症の脚本家が,会社をクビになり,死ぬまで酒を飲み続けようと決心してラスベガスに向かい,そこで知り合った娼婦と最後のひとときを過ごすというものだ.

当たり前だが,こういう話は要約したらどうにも面白くない.

しかし,この映画はいい映画である.映画の中では,ベン(主人公,ニコラス・ケイジ)が,なぜ依存症に陥ってしまったか,詳細は何も明らかにされない.中心は,サラ(相手役の女優,エリザベス・シュー)とベンの恋愛(?)である.サラは,暴力的なヒモにおびえながら毎日を過ごしている.ヒモにまるでゴミのように扱われているのだ.二人の境遇はある意味でとても似ている.二人がつかの間の安らぎを求めて魅かれ合うのは必然ともいえる.その後の展開も,かなり読める.ある意味で意外な展開は何もない.

にもかかわらず,この映画が魅力的なのは,昨日のマルケスの作品と同様,ディテールがすばらしいからだ.

逆に言えば,映画や文学は,アイデアがよくてもディテールが駄目なら駄作だということなのだろう.

2007-12-11

大佐に手紙は来ない

ガブリエル・ガルシア=マルケスの短編を読んだ.
読んだのは,「大佐に手紙は来ない」.

「大佐に手紙は来ない」は重苦しい作品だ.あらすじは,ここにあるから詳しくは書かない.いや,書くのも重苦しい.テーマは世界の老齢者共通のものだ.過酷な貧困にあえぐ老人にとっての希望とは何か?この作品の希望は,一言ではとても書けない.それは,作品のディテールにあるからだ.老夫婦の細やかな愛情表現であったり,大佐の心理描写であったりする.ディテールを無視してしまったら,全く希望のない老夫婦の救いのない日常を描いただけということになってしまう.

そういう作品.

2007-12-10

「好きを貫く」よりも、もっとずっと気分よく生きる方法,に関する感想

「好きを貫く」よりも、もっとずっと気分よく生きる方法
というエントリーがあった.

面白いし,気持ちはよくわかる.その一方で,ちょっと違うかもしれないとも思うのだ.
もしかすると,彼は,「好き」の度合いの桁が違う人と会ったことがないのかもしれない.サラリーマンの大部分は,好きなことをしていないから,彼のいうことはもっともだ.
しかし,サラリーマンであっても,ある段階を超えた人というのは実際にいる.彼らにとっては,プログラムや,研究や,ある種の技術の開発や経営は生きることそのものなのだ.だから,彼らは肉体的に疲れて休息したいと思うことはあっても,仕事をやめたいとは思わない.(もちろん,サラリーマン以外にも(もっと)こういう変な人はいる.)

サラリーマンの話ではないので,ちょっとずれてしまうかもしれないが,数学者となると,こういう極端な人の含有率が高い.佐藤幹夫という偉大な数学者がいる.彼は,「朝目が覚めて,さあ,数学するぞ,と思うようでは駄目だ」という.自分で意識しないうちに数学の世界に入っていくくらい没頭していなければならないというのである.私にはとてもできそうにないが,数学が生きることと一体になっているというのは,こういう状態をいうのだろう.

梅田さんは,そういう桁外れの「好き」を頭に浮かべていたのではないか,そんな気がする.

2007-12-07

データをよくみること

データをよくよく眺めていると,通説と異なる結果が出てくることがある.出てくることがある,どころか,通説は大部分思い込みだということがわかる.これは,社内,学内での話でもよくあることで,実際は全く逆のことが起こっていたりするのである.

実態を正確につかむことは難しい.データが全てではないということはもちろんその通りだが,そういうことをいう人はちゃんとデータを分析していない.分析した上で,ここは違う可能性がある,というのはわかる.しかし,はじめからデータはあてにならない,というのは傲慢である.

2007-12-06

登録ニュースサイトとか中国の食品で死亡とか

ニュースサイトで,登録しないと記事が読めないようになっているものがあるが,皆見ているのであろうか.僕はどうも見る気にならない.どういう層がどの記事に反応しているか見たいということなのだろうが,成功しているのかなぁ.

ぜんぜん関係ないけど,中国製品,食べていきなり死ぬところまで来てるとは...
中国製即席めん食べた小学生4人が死亡 同国紙報道
既に中国の食品を避けている人は多いと思うが,ここまでくると,ちょっとでも中国の食品が混ざっていると怖くて食べられない.
食べてすぐに死ぬというのは,中国の7色に輝く河川と食品のようなレベルを超えていると思うのだが.

2007-12-05

バンバン書ける人

Java暗号本と微積分の教科書が終わって,さらに調子に乗って書いた5冊目(多分,微積分の本が3冊目,Java暗号本が4冊目になる)の出版計画を進めている.どうなるやら.

一冊書くのに年単位でかかる僕にとっては,内田樹先生のようにバンバン書ける人がいることが信じられない.ほとんど月刊内田樹という感じだ.Blogをまとめたものや対談が多いとはいえ,たいしたものだと思う.

真似したいわけじゃないのだけれど.

2007-12-04

Javaで作って学ぶ暗号技術

「Javaで作って学ぶ暗号技術」(共著)完全脱稿.
執筆期間だけで2年.構想まで含めたら3年近くかかっている.ここまで頑張ってしまうと,こういう技術本はもう書けないような気になる.とにかく大変な仕事だった.

この本は,公開鍵暗号,共通鍵暗号,ハッシュ関数という3つの基本的な部品(三種の神器)の実装アルゴリズムを徹底的に解説し,これらを使って最終的にミニチュアのSSL(Secure Socket Layer)を作ってしまうという,今から思えばかなり無茶な構想を実現したものだ.

実際に出版されるのは,来年5月以降になりそう.いや,とにかく疲れた.

2007-12-03

溺れそう

「Javaで作って学ぶ暗号技術」という本,最後の詰めのインデックス作成なのだが,ものすごく時間がかかる.特に最終章(SSLを作る)のインデックス量は膨大で,何時間作業してもなかなか終わらない.現在,最終章の1/3程度.苦しい.この他に微積分の教科書がかさなって溺れそうである.うう.

2007-12-01

自分たちが何に支えられているかよく考えておくこと

小麦農家で所得3割減が続出 北海道など深刻 新農政で

担い手を育てる狙いで今春始まった国の新農業政策で主産地ほど小麦農家の年間所得が下がることが分かった。全国収穫量の6割を占める北海道では3割以上減る農家が続出する見通し。国の助成金が近年の収量増を十分反映しない仕組みに変わったため。国も対策の検討を始めた。

こういうニュースがあると,自分を支えている社会の仕組みが変更されたとき何が起きるかを考えさせられる.一見すると強いように見えるシステムに死角はないのか.

例えば,現在,電力会社の収益が好調だ.オール電化住宅の普及で需要が伸びているからである.ガス会社は青息吐息だ.電力会社が好調なおかげで,電気設備会社など,その関連会社も調子がいい.

しかし,電力9社が事実上の独占企業でなかったらどうなるのか.海外の企業が自由に電力プラントを作り,徹底した合理化を進めて勝負に出られるように法改正されたらどうなるのか.

こうしたことはある日突然起きる可能性がある.あわてないためには,自分たちが何に支えられているかよく考えておかなければならないのだ.