『小谷野敦のカスタマーレビュー2002‐2012
』 おお、これは...10年分の自分のアマゾンカスタマーレビューを本にまとめて2200円+税で売るという、冷静に考えてみればありえない本(だって、読む気になればタダで読めるのだから)。
同様のことをして本が出せるのは山形浩生氏くらいだろう(彼には、『訳者解説
』という本があるが)。山形氏の書評は、どちらかというと論文のレフェリーレポートに近く、研究者としては、非常に身につまされる。
というわけで、読みました。新幹線の往復で。感想はですね…、
サイコー! である。
言うまでもなく、私はかなりの理系(数学+情報工学+統計学)なので、小谷野氏の文学論は難解でよくわからない。だから楽しんだのは、それ以外の部分である。
小谷野氏のブログは読んでいるが、本は読んだことがなかった。文学論は理解不能だし、「もてない男」関係もあまり興味がない。もう妻子持ちだし、もてるもてないなんて話は、もはやどうでもよい。しかし、本書は面白い。
びっくりしたのは、私が読んで「よくわからない」と思っていた本が、彼にもよくわからない場合があるということだ。例えば、ルネ・ジラール『暴力と聖なるもの』に星1つをつけ、こう書く。
でも、小谷野氏が「何となくわかる」という程度なら、(彼ほど読解力がない)私にわからないのは当たり前である。
ホルクハイマー、アドルノの『啓蒙の弁証法』についてはこうだ。
この調子で痛快な書評が続くのだ。(私にとって)面白くないはずがない。
彼の書評は両極端な傾向がある。1点か5点が多い。思わず全部数えてしまった。結果は次のようになった(微妙に数え間違えているかもしれんけど、結論には影響ないでしょう)。
同様のことをして本が出せるのは山形浩生氏くらいだろう(彼には、『訳者解説
というわけで、読みました。新幹線の往復で。感想はですね…、
サイコー! である。
言うまでもなく、私はかなりの理系(数学+情報工学+統計学)なので、小谷野氏の文学論は難解でよくわからない。だから楽しんだのは、それ以外の部分である。
小谷野氏のブログは読んでいるが、本は読んだことがなかった。文学論は理解不能だし、「もてない男」関係もあまり興味がない。もう妻子持ちだし、もてるもてないなんて話は、もはやどうでもよい。しかし、本書は面白い。
びっくりしたのは、私が読んで「よくわからない」と思っていた本が、彼にもよくわからない場合があるということだ。例えば、ルネ・ジラール『暴力と聖なるもの』に星1つをつけ、こう書く。
かつて「ニューアカ・ブーム」の頃によく読まれた本だが、もともと非科学的なフロイトを、さらに非科学的な脱構築とやらにかけるのだから、もうしっちゃかめっちゃか、「何となく分かる」けれど、概してフレイザーの『黄金の枝』にバタイユを加味したようなものである。ジラールはカトリックだから、欲望の模倣にしたって、最後は神の模倣に行きつくもので、まあ暇な人はどうぞ、という感じの本。難解な文章を楽しみたい人のための娯楽評論としても賞味期限切れでしょう。そ、そうなんですか! 精神分析がなにやら科学ではないというのは、薄々感じてたけれど、読んでもわからないのは馬鹿だからしょうがないよね、と思ってたんですが。
でも、小谷野氏が「何となくわかる」という程度なら、(彼ほど読解力がない)私にわからないのは当たり前である。
ホルクハイマー、アドルノの『啓蒙の弁証法』についてはこうだ。
だいたい、アドルノという人は意図的に難しい文章を書く人であって、もしこの本について知りたいなら概説書を読めばいい。こんなもの真面目に読んだらバカを見る。アドルノやその追随者は「アウシュヴィッツ」をやたら重視するが(アドルノに限らないが)、なんでポル・ポトやスターリンではないのか。要するに西欧でそんなことが起こるなんて信じられないという西欧中心主義なのである。啓蒙されたのち野蛮になるのではなくて、人間の一部は何を教えられたって野蛮なのであって、そこには弁証法なんてものはない。弁証法なるものはヘーゲル歴史哲学というインチキと不即不離であって、歴史法則主義が成り立たないことはポパーの言う通り。それに、ヒトラー以後、西欧ではアウシュヴィッツ的事態は起きていない。フランクフルト学派は母国ドイツだからやたら気にするわけだが、そこが彼らの限界でもある。もっともこの本はまだ何を言っているか分かるからいいが『否定弁証法』となると何を言っているのか分からないから困る。分からないのはあなたが悪いんじゃなくてアドルノが悪いのである。おお。意図的に難しいことを書いてるんだったら、分かるはずもない。なんだ、わからなくてもいいのか。ニューアカブームの頃に大学生だったので、こういうことはわからない方がオカシイのかと思っていた。
この調子で痛快な書評が続くのだ。(私にとって)面白くないはずがない。
彼の書評は両極端な傾向がある。1点か5点が多い。思わず全部数えてしまった。結果は次のようになった(微妙に数え間違えているかもしれんけど、結論には影響ないでしょう)。
確かに両極端だ。一様分布と比較するためにカイ2乗検定すると、X-squared = 91.0612, df = 4, p-value < 2.2e-16と出る。一様分布という仮説は棄却される。星2つと星5つはアベレージに近いが、星1つが多く、星3つと星4つが異様に少ない。
もっとも、これで小谷野氏が他のレビュアーと比較して極端な評価をしがちだと結論することはできない。他のレビューと比較してみないことには何ともいえないからだ。レビューを投稿する立場に立ってみれば無難な評価は面白くない(投稿するインセンティブがない)だろうし、案外レビュー全体の中では「普通」なのかもしれない。


